資金繰り改善のポイント

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資金繰り改善 (資金繰り改善のポイント)
 このページでは、資金繰りが悪化する原因の探し方と、その改善の方法をご説明します。一時的な資金繰り対策ではなく、資金繰りを根本的に改善することを目指す考え方です。
資金繰り悪化の原因を探す方法
■ 資金繰りはなぜ悪化するのか?

 資金繰り悪化の原因は様々で、儲かっていても資金繰りに苦しむ会社はたくさん存在します。資金繰り悪化の原因のうち主なものを挙げると、利益の減少、売上債権の回収遅れ、在庫の増加、過大な設備投資、無計画な借入等があります。

■ 運転資金の借入は資金繰りの改善にはならない

1.運転資金の借入は一時しのぎにすぎない
 会社の資金が不足しそうになると、銀行などから運転資金を借り入れることを第一に考えがちですが、これは一時しのぎに過ぎず抜本的な資金繰りの改善にはなりません。それだけではなく、運転資金を借り入れることで、会社はいくつかのリスクを背負うことになります。そのリスクとは次のようなものです。
  • 運転資金の借入は新たに資金を生み出さないため、将来その借入金を返済するときに資金繰りが悪化すること
  • 借入金が多額になる場合は、支払利息が会社の収益を圧迫すること
  • 会社が借入金に頼る体質だと、新規の借入が不可能となった場合に倒産に追い込まれるおそれがあること

2.資金繰り改善とは運転資金を借りずに済むように財務改善をすること
 運転資金の借入は場合によっては必要ですが、第一に考えることではありません。資金繰りの改善で第一に考えるべきことは、会社が運転資金の借入に頼らなくても済むようにすることです。

3.設備投資のための借入と運転資金の借入は別物
 なお、設備投資のための借入は、その設備が新たに生み出す資金によって返済されることになりますので、運転資金の借入とは分けて考えます。

■ 資金繰り改善の方法

 資金繰りを改善していく方法は、資金繰り悪化の原因を把握してそれぞれの原因につき対策をとることで、会社の体質を”資金が不足しない体質”に改善していくことです。ポイントは次の2点です。
  • 資金繰り悪化の原因をいかに正確に把握するか
  • その原因に対していかに効果的な対策を打つか

■ 資金繰り悪化の原因を正確に把握する

1.キャッシュフロー計算書を作成して資金繰り悪化の原因を把握する
 資金繰り悪化の原因を正確に把握するために、キャッシュフロー計算書を作成します。キャッシュフロー計算書とは、会社の一定期間の現金預金が増減する要因を、@会社が営業活動を行ううえで生じた要因(営業キャッシュフロー:営業CF)A会社が設備等の購入や売却をしたことにより生じた要因(投資キャッシュフロー:投資CF)B会社が新規の借入や借入金の返済、増資等を行なったことにより生じた要因(財務キャッシュフロー:財務CF)とに区分して表示するものです。

2.C社の資金繰り
 C社を例にとって考えると次のとおりとなります。なお、キャッシュフロー計算書の読み取り方は少し複雑になりますので、ここでは大体の雰囲気が把握できれば結構です。C社のキャッシュフロー計算書の分析はその下に記載していますので、ご面倒でしたらC社のキャッシュフロー計算書は、ざっと目を通すだけでも構いません。


(C社のキャッシュフロー計算書)
項目 第11期 第12期 第13期
 税引前損益 800 −500 500
 減価償却費 200 200 200
 売上債権の増加 −900 −100
 売上債権の減少 600
 在庫の増加 −600 −100
 在庫の減少 400
 その他営業CF −200 −200 −200
営業CF合計 −700 500 300
 固定資産の購入 −200 −200 −200
 固定資産の売却 0 50 0
投資CF合計 −200 −150 −200
フリーCF −900 350 100
 借入金の返済 −300 −300 −300
 新規借入 1,200 0 0
財務CF合計 900 −300 −300
当期現預金増減 0 50 −200
(注)フリーCF:営業CFと投資CFの合計で、会社が営業活動をした結果生じた現預金の増減の状況をあらわします。

(C社の状況)
 第11期は利益は出ていますが売上債権、在庫がともに増加しているため営業CFは−700となってしまいました。設備投資もしているので、フリーCFは−900となり資金繰りが悪化したため、新たな運転資金1,200を借り入れなければならなくなりました。

 売上債権の増加は、一般的には売上債権の回収遅れや不良債権化によって生じます。これは回収すべきものをまだ回収していないということになり、資金繰りに悪影響を及ぼします。
 また、在庫の増加は一般的には過剰在庫や不良在庫の増加によって生じます。これはすでに仕入れて支払い済みのものがまだ現金化できていないということになり、売上債権の増加と同様に資金繰りに悪影響を及ぼします。

 第12期は赤字になってしまいましたが、売上債権、在庫がともに減少しているため、営業CFで500、フリーCFで350のプラスとなり、借入金を返済しても50の現預金が増加し資金繰りは良好でした。

 第13期は利益が出ており、売上債権、在庫とも若干増加したものの営業CFは300、フリーCFは100のプラスとなりました。しかし借入金の返済があるため最終的には200の現預金が減少してしまいました。

(C社の資金繰り上の問題点)
 C社の第11期から第13期を通算して見てみると、利益は800あがっているにもかかわらず、現金預金は150減少し、借入金も300増加しています。これは売上債権と在庫が合わせて700増加したことが主な原因です。増加した原因について詳しく調べてみると、次のことが分かりました。
  • 売上債権の管理が個々の営業担当者まかせになっていて、回収サイトも営業担当者が個々に決めていた。そのため売上債権の回収期間が期や営業担当者によってばらばらになり、結果的に回収期間が長期化していた。
  • 在庫の管理は部署ごとに行っており、全社的に在庫を管理する仕組みが構築されていなかった。第11期頃から得意先より、多くの商品を少量ずつ納入して欲しいという要望が増え、C社はこれに対応していた。しかし、その結果在庫量が増加し、特に各部署で共通して取り扱う商品についてはその傾向が顕著となった。



資金繰り悪化の原因が分かったあとの対策
 C社の資金繰りを改善するには、売上債権回収の全社的なルールを決めて営業担当者の中でそのルールを徹底させ、長期化してしまった売上債権回収期間を正常に戻すこと、在庫管理を全社的に行うこととして各部署間で生じているムダを取り除くとともに、発注の方法を多品種少量の在庫に合ったものにすることが必要です。
 また、C社の場合には借入金の返済という負担があるため、この負担の軽減も考えます。有価証券などの経営に直接関係のない資産で現金化できるものがあれば、これを現金化して借入金の返済に充てることを検討します。
 このように資金繰り悪化の原因を正確に把握し、その原因ごとに対策をとることにより会社の資金繰りは改善されていきます。


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